プロジェクト研究推進の経緯と目標 

 日本環境教育学会関西支部では、支部研究大会における特別講演・シンポジュウム・自由集会、あるいは関西支部ワークショップ等において「水辺の環境教育」について学び合い、議論を継続してきました。
 これまでの「水辺の環境学」・「水辺における環境教育実践」に関わる研究の成果と課題を整理し、「環境保全」「バイオリージョン」「市民参画と意志決定」などをテーマに、幅広い立場から議論し、「持続可能な流域社会の形成」に向けた「水辺の環境教育」に関する実践方法の研究とその評価について考察し、また支部webサイトも活用していく予定です。


プロジェクト研究推進計画

 第1回研究会(とき:2014年7月26日~27日 ところ:奈良県吉野郡川上村)
 第2回研究会(とき:2014年8月2日~3日 ところ:法政大学)
 第3回研究会(とき:2014年12月20日 ところ:京都教育大学)

学会プロジェクト研究Ⅳ「水辺の環境教育」第1回研究会報告

スケジュール:
7月26日(土)
13:00 大和上市駅改札前集合

13:30 民宿「橋戸」到着
14:00~17:00 フィールドワーク(源流館、粉尾の吉野杉、吉野川)
17:00~18:00 入浴・夕食

7月27日(日)
7:00 起床
8:00~14:00 フィールドワーク(大台ケ原の現状と課題、カモシカ調査地点)
          昼食:柿の葉寿司
15:00 大和上市駅解散

 
「伊勢湾台風痕跡水位の碑」を見学  「森と水の源流館」を訪れる
 
源流は水も澄んでいる  水生昆虫の調査を体験




学会プロジェクト研究Ⅳ「水辺の環境教育」第2回研究会報告


  とき:2014/8/3 ところ:法政大学

 去る2014 年8 月3 日に法政大学において第25 回日本環境教育学会全国大会が開催され、3日目の午後、プロジェクト研究Ⅳの第1回研究会が開催された。はじめに本庄眞関西支部長から挨拶があり、プロジェクト研究「水辺の環境教育」を開催するまでの経緯と発起人等が紹介された。次に、この研究のおおまかな目標、内容に関する原案、推進計画が示された。
 まず、本庄支部長(奥吉野自然研究会・奈良環境教育研究会)から吉野川をテーマとして取りあげた環境教育の事例が紹介された。つづいて、谷村載美氏(大阪市教育センター)から学校ビオトープの活用実態、さらに、丸谷聡子氏(同志社大学大学院)から学校教育における環境教育の課題が報告された。
 次に、フロアにお越し頂いた参加者から自己紹介を兼ねて「水辺の環境教育」についての質問と所見を一人ずつ語って頂いた。この間、それぞれの参加者にメモを配布し、「水辺の環境教育」の課題やご意見などを書いていただき、研究会の最後に回収した。またこのとき、インターネット回線を使って、神戸からも発起人の一人である松田聡氏(関西支部世話人・伊川流域研究会)にご参加いただいた。
 その後、回収したメモを共通する内容でグループ分けをした。それらは「評価方法」「活動とねらいの課題・地域の課題」「プロジェクトの基本」「指導者の課題・内在するリスク」「学校と地域社会の問題」などのテーマに分けられた。
 ひとまず、ネット上で「水辺の環境教育研究会」を立ち上げたらどうかという意見が出され、会場の皆さまの賛同を得ることになった。今後、出された課題を共通理解しながら、それぞれの課題に向けて、議論と研究を深めていく必要があり、これらの議論は、関西支部研究大会(2014 年12 月20 日、於:京都教育大学)に繋げていく方向性が確認された。

本庄 眞 支部長から研究会の趣旨を説明
自己紹介と関連事項の質問
広く全国的な視野で討論が進む 「水辺の環境教育」への関心は高く、多数の参加者を得た


KJ法による研究会のまとめ

 日本環境教育学会 第25回全国大会(法政大学)
  プロジェクト研究Ⅳ 課題抽出(KJ法)


○評価方法
・環境教育←相互フィードバックをより強く→環境・諸学、基礎研究
・水環境のシステム的な構造(川の流域など)の調査、記述、解析、評価の方法とモデル化
・「水辺の環境教育」その地域における問題解決型(プロジェクト型)
 環境教育事例、成功失敗事例を収集してはどうか
・水辺(川)の体験学習を時系列的にまとめられない→教育の素材にしたい
・水環境、健全性指標(環境省、日本環境学会)の応用と評価をさきに進める必要がある
・学習指導要領にある学習内容と関連した水辺の環境教育プログラムを作成し、多くの教職員が活用できるようにする
・「水辺の環境教育とはどういうことか」という共通認識がないことだと思う → ただ、正解を一つに決めれば、事例は増えていくので、それはそれでいいと思う

○活動とねらいの課題・地域の課題
・3年生のゼミ生と一緒に川へ行く
 →五感を使った指標やパックテストを行い、その川の現状を知る
 →調査結果をふり返る
 →しかし、参加者は川に入ったり採水したりが楽しかったという記憶しか残っていないが、「それで良いのか?」
・水、水辺の危険さを伝えることも重要
・環境の価値をどう表現するか(あるいは数量化するか)
・個(点)の学習から面的学習に→くらしには川とか海の区別なく関連している
・川の流れは固定したものではなく変化していくものだという認識が必要だ
・霞ヶ浦(含む:流域河川) COD値の解釈 
  (○○以下だからキレイ?、○○以上だから汚れている)
・霞ヶ浦「汚れている」の印象 (恵み)に対する理解の少なさ(ストーリー、伝え方)
・生物多様性教育のリソース 「生態系の多様性(多い)」「種の多様性(多い)」「種内の多様性
 (多い)」→一種にフォーカスする。(指導者が種の名前がフォローできないときの逃げ道にも)


○プロジェクトの基本
・“水辺の定義”は何
・ガバナンス
・水辺と文化
・アジア型総合的流域管理
・生活と水

○指導者の課題、内在するリスク
・生物多様性から種の保存をどうとらえるか
・水辺は危険がともなう
 1対多数はリスクが高い
 指導者(支援者)不足
・池ビオトープの維持管理方法がわからないという理由で、放置されがちになっている。学校にアドバイザー等を派遣し、教職員が学べる機会づくりが必要

○学校と地域社会の問題
・「水辺の環境教育」 誰のため、どんな力を身につけてもらうのか?→水辺は手段?
 社会をどのように変えたいか→水辺は手間?
・地域のため池や海、川は学校としては行ってはいけない場所
 →PTA・学校の理解や協力が得られにくい